善福寺手帳

ぜんぷくじてちょう

キアン・ソルタニのミニコンサート

アメリカの公共ラジオNPRで、アーティストが聴衆とすぐ近くの距離でライブをするTiny Desk Concertというシリーズに、 近年ヨーロッパを中心に売り出し中の若手チェリスト、キアン・ソルタニ(27)が出演していました[NPRより]。

このシリーズ、ジャンルに関わらず幅広い分野のアーティストが登場する15分程度のライブで、この日のプログラムは、ポッパー「ハンガリー狂詩曲」、シューベルトの歌曲「夜と夢」(ソルタニ編)、自作の"Persian Fire Dance"の3曲。キアン・ソルタニはイラン系オーストリア人。

蛇足ですが、この番組ではプログラムのことを、他のジャンルのライブでの言い方にならって“セットリスト”(set list)と言うんですね。クラシックのコンサートではあまり見ない言い方なので、面白いと思いました。

この番組にソリストとして出演するチェリストは、一年前のヨーヨー・マのとき以来で、キアン・ソルタニがそれだけアメリカでも注目され始めた、ということだと思います。

アンコール

11日、ヨーヨー・マは、アメリカ・ボストン近郊タングルウッドでバッハの組曲全曲を弾き終わった後、 地元出身のアメリカを代表するシンガーソングライター、ジェームス・テイラー(71)とのデュオでアンコール。 曲はジェームス・テイラーの"Sweet Baby James"(1970)。演奏と歌は2分40秒頃から。

ヨーヨー・マとジェームス・テイラーは何度か共演していて、2008年のアルバムでは"Here Comes the Sun"(ビートルズ)を二人でカバーしたりしています。

ヨーヨー・マは、ちょうど1年前に始めた世界36ヶ所でバッハ全曲を弾く2年間のツアーの、これが18ヶ所め。1番から6番まで6曲ずつあるバッハの組曲でいえば第3番が終わったところ、ちょうど半分まで来たことになりますね!

2年間で世界36ヶ所でバッハ全曲だなんて、1年前は信じられませんでしたが、本当にやってしまいそうな気がしてきました。

ヴェルビエ音楽祭のシェク・カネー=メイソン

ロイヤル・ウェディングのチェリスト”、シェク・カネー=メイソン(20)がこの夏、スイスのヴェルビエ音楽祭で弾いたコンサートがmedici.tvで見られるようになっていました。

Sheku Kanneh-Mason and George Li play Beethoven, ... [medici.tv 登録は無料]。

プログラムは、ベートーヴェン「魔笛の主題による12の変奏曲」、ルトスワフスキー「墓」、ドビュッシーのチェロソナタ、それにメンデルスゾーンのチェロソナタ第2番ニ長調で約1時間。 ピアノは2015年チャイコフスキーコンクール2位のジョージ・リー(23,アメリカ)。 先月7月24日、スイスのヴェルビエでの演奏。公開期間は3ヶ月間。

下はその抜粋。

シェク・カネー=メイソンは登場するたびに“ロイヤル・ウェディングの…”と言われて(私もついそう書いてしまいます)、 本人としてはそろそろ飽き飽きしているかも知れませんが、何にせよこうして演奏の場がもらえることは若手演奏家にとってありがたいことでしょう。

ソッリマ来日会見

イタリアのチェロの“鬼才”ジョバンニ・ソッリマが来日していることはすでに話題になっていますが、きょう都内で行われた来日記念レセプションにお招き頂いて行って来ました。

ソッリマはきのう6日には、ミューザ川崎で東京シティ・フィルとドボルザークのチェロ協奏曲を演奏。その演奏と自作曲のアンコール[動画]には熱狂的なスタンディング・オベーションが起こっていました。

そして12日には、すみだトリフォニーホールで100チェロコンサートの予定。これにはよく知っているチェロ友だちも多数、参加することになっているよう。

レセプションが行われたのは、今回の「100チェロ」のイメージにもなっている葛飾北斎ゆかりの北斎美術館。そこでちょうど展示されている「十二ヶ月花鳥図」の屏風をバックにソッリマがチェロを弾くのは、なかなかいい構図でした。トークは司会の質問に応えるかたちで、通訳付きの英語。 IMG_0971.jpg

トークで印象的だったのは、作曲と演奏に関してで、現代では両者が分かれてしまっているが、自分にとって両方するのは自然なことで「知識があったほうが自由になれる」。

ソッリマの演奏は初めて生で聴きましたが、チェロのあらゆるところを使った奏法、たとえば駒の向こう側を弾くときでさえ音を鳴らし切っている、つまり偶然でなく表現として意図して奏でられているところがすごいと思いました。 聴いているこちらは、次は何が起こるんだろう?…と思っているうち、すっかり彼の音楽に吸い込まれていってしまうというぐあい。

後半は100チェロの参謀格(?)エンリコ・メロッツィとのデュオ。皆で手拍子、「ハレルヤ」の合唱まで。

最後にソッリマさんと直接お話することもできました。今年ベルリンの壁崩壊から30周年だけど、25周年のときのようなイベント(このときメロッツィが書いた曲が今回の100チェロのプログラムにもあるはず)の計画はあるのか聞いたら、今のところ何もないみたい。

あと、これはソッリマさんに直接言ったことではないけど、彼ほど演奏や作曲、幅広い芸術分野の表現をし、そして彼の年齢を迎えた人なら、自身の音楽・芸術に関する考え方やこれまで研究してきたこと、次の世代に伝えたいこと…などが時代や国境を越えて広く伝わるよう、言葉と文字の表現、つまり本に書いて残すようなことがあってもいいのではないかな、と思います(期待を込めて)。

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12日の「100チェロ」公演には、迷った末に結局、申し込みませんでした。先週あったオーケストラの本番が終わったら、この夏、もうソッリマについて行くほどのバイタリティが残っている自信がなかったからで、仕方ない判断だったかなと思っています。参加する人はがんばってね!

エキストラ本番

190804h.jpg 酷暑の日曜日、エキストラ参加のオケ定期演奏会本番。 プログラムはブラームス「悲劇的序曲」Op.81、バッハの無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番シャコンヌの管弦楽版(ヨアヒム・ラフ編曲)、 それにベートーヴェンの交響曲第7番という「三大B」プログラム。

バッハのシャコンヌは、静かな木管アンサンブルが8小節間のモチーフを奏でた後、その変奏を色々な楽器が受け渡し合う編曲で、チェロにも細かい動きや繊細な強弱の変化が求められて苦労した。 原曲に憧れるヴァイオリン弾きにはもちろんのこと、チェロ四重奏編曲が耳になじんでいるチェロ弾きにも、意外な変奏が織り込まれていてハッとさせられるのではないかと思う。ここでも指揮のY先生は、編曲の意図を楽譜から丁寧に読み解いて指導してくださった。

ホールは1,000席と聞いていた客席が、開場と共にほぼ満席。

ベートーヴェン7番のフィナーレが終わると、ブラボーの大きな声と拍手。客席に傾斜があるので、聴衆の方たちがより一層近くに感じられた。その熱気のまま弾いたアンコールのハンガリー舞曲第1番にもこれまた大きな掛け声と拍手。

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このオーケストラで弾かせてもらうようになって2年目、3回目の公演。今回の公演の練習も初回からすべて参加させてもらった。そこまでするエキストラはあまりいないけど、ここでの練習は楽しいし、勉強になる。それに若くて上手なこのオケが、自分のような者に声を掛けてくれたのだから、自分にできるだけのことはしたい、というのはある。 ただ、団員のみんなと同じようでいて団員ではない、そこのところの“領分”はわきまえようとは思いながら。

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今回のホール、神奈川県立音楽堂は初めて。開館65年という歴史あるホールで、今年6月リニューアルにあたり、ステージの床板の一部を使って作ったというキーホルダーを頂いた。オケに一つだけ頂いた記念品を、打ち上げのジャンケン大会で、ふだんはジャンケンに弱い自分が、なぜか勝ち取ってしまった。

若い女性ばかりの華やかなチェロパートの中“黒一点”で弾かせてもらったことといい、今回の本番は、最高にツいていたのかも知れない。